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はじめに

- 研究室に興味を持った医学科学生や大学院受験を考えている諸君へ -

 私達の研究室は (1) 繊毛の構造と機能の多面的研究、(2) 質量分析装置,
経験的ベイズ法や学習機械を組み合わせたがん診断の開発、の2つを大きなテーマとして掲げています。基礎と応用の一見相反する研究領域を同時に進めているように見えるかも知れません。

 繊毛というかなり限定された研究領域に身を投じる事に躊躇する学生諸君が多いかも知れません。評論家の加藤周一 (1919〜2008) はその著書『羊の歌』の中で、血液学専攻から評論家になった理由として、「余りにも狭い血液学に自らの身を投ずる事に決心出来なかった」と言っています。勿論、今や血液学は大変幅の広い学問領域となっていますが、皆さんの中には戦後直ぐ加藤が血液学に対して抱いた感情と同等のものを繊毛に対して見出すかもしれません。然し乍ら、繊毛は体の殆ど全ての細胞に存在し、様々な機能を担っている事が次々に判っており、その機能の多様性に驚嘆させられます。細胞レベルから始まって、発生、器官の機能、疾患、精神機能まで繊毛と関係する研究領域は大変広くなっており、意外な分野にまでその領域が広がっています。従って、繊毛の細胞生物学研究は、ミクロからマクロなレベル、そして現在の研究手法では明確に定義しにくい精神機能の様な領域迄、様々テーマを設定する事が可能な魅力的な分野であるといえるでしょう。学生諸君の幅広い興味に十二分に応える事が可能な研究領域であります。

 諸君の中には、基礎研究への興味は余りなく、臨床医学に直結する研究を目指している人もいるかも知れません。私達の研究室では、本学クリーンエネルギー研究センターと既に4年に亘って、新しいイオン化法を臨床応用する共同研究を行って来ました。現在は、これに加え医学部外科学講座第一教室 (藤井秀樹教授)、同人体病理学講座 (加藤良平教授)などのご協力を得て、質量分析機を応用したがん診断の開発に焦点を絞って開発を進めています。この研究には当然のことながら臨床医学、病理学の知識が要求されます。また、質量分析を理解して応用する為には物理化学の知識が必須であります。更に、現在、このがん診断装置を腫瘍マーカー等に依存しない新しいパラダイムの装置にする為に、早稲田大学の田邉國士博士
 (本学客員教授)
の全面的なバックアップで学習機械の応用を試みています。従って、数理統計等に興味のある学生諸君の活躍出来る場が大いにあります。この装置は、昨年度より島津製作所の参画を得て本格的な開発に移行しています。この様な革新的な医療機器開発に関心のある学生諸君にとっても、本講座で研究を行う事は自らの視野を広げる大きなチャンスであるといえましょう。